ビジネスのモニターの概念

ビジネス指標、メトリック、キー・パフォーマンス・インディケーター (KPI)、およびビジネス指標モデルは、ビジネスのパフォーマンスをモデル化、モニター、分析、および改善するための主要な概念です。

WebSphere® Business Monitor は、ビジネス・オペレーションおよびシステムをモニターおよび管理するのに役立ちます。

ビジネスにおける特定の領域をモニターし、その効率を評価し、問題の特定やパフォーマンスの向上を実行する場合は、どの業績指標が必要な情報を提供するのかを、最初に判別します。こうした業績指標は、ビジネス指標と呼ばれます。ビジネス指標は、リアルタイムのビジネスのモニターを実行するために必要な、パフォーマンス管理の側面を説明します。

プロセスのビジネス指標を評価することは、経営目標を達成するために必要不可欠です。プロセスのパフォーマンスは、メトリック、KPI、カウンター、およびストップウォッチの値に対して評価されます。これらのビジネス指標の値は、パフォーマンスに関する広範な情報を提供します。

メトリックは、ビジネス・パフォーマンスの評価に使用するプロセスまたはプロセス・エレメント (タスク、再使用可能サブプロセスなど) の指標です。 メトリックは、単体で使用することも、他のメトリックと組み合わせて使用することもでき、経営目標に対するパフォーマンスを測定する KPI の計算を定義します。メトリックは、WebSphere Business Modeler を使用して、特定のプロセス内で定義されます。そうしたメトリックの値は、WebSphere Business Monitor を使用して取得、および評価されます。 メトリックには、プロセスの期間などの数値、または商品の配送日などの非数値を含むことができます。ビジネス・メトリックの例として、供給者の平均応答時間、保険契約のプロセスにおけるリスク査定手順のコストなどがあります。

KPI は、1 つ以上のメトリックから構成されるビジネス指標です。これは、特定のプロセスと関連付けられており、 上限値および下限値、またはその両方を含む、範囲、値、またはプロセスが到達すべきパフォーマンス目標を形成します。KPI は、一般的に数値で示されます。言い換えると KPI とは、制限値を持つメトリックであり、1 つ以上のメトリックから構成されます。 お客様からの問い合わせに対する平均応答時間 2 営業日以内は、KPI の簡単な例です。さらに複雑な KPI では、詳細な仕様が用いられます。例えば、配送プロセスの出荷期間の場合、配送日に対応する注文日が追跡され、注文時からの平均的な出荷時間が目標である 5 営業日の残り 20 % 未満の時間帯となる場合にモニターされるよう指定できます。

カウンターおよびストップウォッチは、シチュエーションまたはイベントの発生回数を測定する特別なメトリックです。これらは、ビジネス指標モデル内に定義され、測定対象の数値を追跡し続けます。カウンターは、例えば 1 日当たりの注文処理プロセスのインスタンス数などを追跡できます。ストップウォッチは、例えば、注文処理プロセスの開始時刻などを追跡できます。

メトリック、KPI、カウンター、およびストップウォッチは、WebSphere Business Modelerビジネス指標エディターのコンテキスト内で定義されます。次に WebSphere Business Monitor で評価、および測定されます。予想されるビジネス・パフォーマンス・レベルと実際の結果を比較するために、WebSphere Business Monitor は、そのビジネス指標をエクスポートして、WebSphere Business Modeler に戻します。

各プロセスにおいて、WebSphere Business Modeler は、ビジネス指標モデルを作成できます。ビジネス指標モデルは、モニター対象についての情報、およびその中でモニターされるビジネス指標を含むコンテナーです。WebSphere Business Modelerビジネス指標エディターのユーザーは、モニター対象のプロセス、サブプロセスをモニターするかどうか、および使用するビジネス指標を決定します。また、ビジネス指標モデルを作成してから、それを WebSphere Business Monitor にエクスポートします。ビジネス指標モデルには、プロセス内に定義されているすべてのビジネス指標 (メトリック、KPI、カウンター、およびストップウォッチ) とそのサブプロセスが含まれます。

WebSphere Business Monitor は、ビジネス指標モデルを受信します。インポートしたビジネス指標モデルに基づいて、WebSphere Business Monitor は 2 つのレベルのモニターを提供します。1 つはプロセス用で、もう 1 つはプロセス・インスタンス用です。

インポートされたモデルのビジネス指標に基づいて、WebSphere Business Monitor は、各プロセス・インスタンスに対してリアルタイム・モニターを適用します。例えば、注文コスト (ビジネス指標) を、注文処理プロセス用に測定できます。プロセスに 3 つのインスタンスがある場合、注文コストは、通常、次のようにプロセス・インスタンスごとに別の値になります。
WebSphere Business Monitor では、各プロセス・インスタンスに集計を適用することにより、プロセスをさらに全体としてモニターできます。 例えば、注文処理プロセスで、平均注文コスト (ビジネス指標) を測定できます。プロセスに 3 つのインスタンスがある場合、WebSphere Business Monitor は、プロセスのすべてのインスタンスの注文コストをチェックし、次のようにそれらの平均を計算します。

WebSphere Business Monitor は、ビジネス指標エディターのユーザーがそのプロセスに対して KPI を指定している場合のみ、プロセス・インスタンス全体の集計演算を実行できます。ビジネス指標モデルが WebSphere Business Modeler からWebSphere Business Monitor へエクスポートされる場合、暗黙的な集計プロセスが作成されます。集計プロセスには、「Aggregates」名が付加され、そのプロセス内の KPI が、プロセス・インスタンス全体を測定して、プロセスの測定値を全体として提供することのみを目的としていることを示します。

WebSphere Business Monitor の一部のビューには、実行時にプロセスのインスタンス全体の集計演算を行うよう設計されているものもあります。それは、「ゲージ」ビュー、「スコアカード」ビュー、および「キー・パフォーマンス・インディケーター (KPI)」ビューです。

アクティブ・インスタンス」ビューは、プロセス・インスタンスおよびプロセスの両方を評価します。

値のエクスポート」ビューは、特定のビジネス指標値を抽出し、抽出した値をエクスポートして WebSphere Business Modeler に戻し、ビジネス・パフォーマンスのモデル化、モニター、分析、および改善のサイクルを終了します。


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